花と彼と優しさと

「最近休みがちだなぁ……皐月は」

　母子家庭の伊東家では、一人娘である皐月が学校を休みがちになっていた。
小学四年生になり、クラスが変わったことが原因なのかと思っていた母、那月。
こういう時の父親だと思えども、元夫には新たな家庭がある。
那月は途方に暮れていた。
しかし、このままではいけないと原因を探ることに決めるのだった。

「ねえ、皐月。少しいい？」
「ママ、ごめんなさい。わたし、今日も学校は行きたくないの」
「休んでもいいわ。ただ、どうして行きたくないのか理由を教えて？」

　なるべく優しい口調で部屋の外から声をかける。
ごめんなさいという謝罪の言葉とともに、学校には今日もいけないと伝えられる。
どうして学校に行くことができないのかと問いかければ、嗚咽まじりの声が聞こえてくる。

「優くんと、喧嘩した」
「優くんって、お隣の優くん？」

　何故隣の家の子供と喧嘩をしたのだろうか。
そんな疑問は浮かんでくるものの、まずは娘を落ち着けることが先決だ。
ゆっくりと口を開いて、部屋に入れてとお願いすれば、呆気なく部屋の扉は開いた。

「優くん、意地悪ばかりしてくる」