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きさらぎ行きの電車に乗って
「つぎは、終点きさらぎです。」
男は、そのアナウンスで目が覚めた。
「やったぁ!」
男は小さく呟いた。
ついにこの時がやってきた。
この日をどんなに待ちわびたことか。
男は、大学の「オカルト研究会」なるサークルの部長である。
主に都市伝説について研究してきたが、男は、霊感ゼロのようで、くねくね、ひとりかくれんぼ、てけてけ、ヤマノケ、数々の都市伝説を解明しようと試みたが、まったくオカルト現象に遭遇したことがなかった。地元で有名な、心霊スポットにも足を向けたが、他の部員が何かを感じ取っても、男は何も感じることもなく終わることも度々であった。
電車で通うほどの距離ではなかったが、男が電車で通学するのには、ある目的があったのだ。
きさらぎ駅伝説。
男は、いつか、自分もきさらぎ行きの電車に乗れるのではないかと、どんな場所に移動するにも、極力電車を利用していたのだ。
男は、隣のどんよりと曇った表情のサラリーマンと思しき男に声をかけた。
「終点で降りられるのですか?」
サラリーマンは、無機質なロボットのような顔を男に向けた。
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