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しかし、入ってみると女子が五十名、男子が十名と圧倒的に女子の方が多かった。
先ずは入部の届を出しに顧問の所へ行く。
顧問は若く、銀縁の眼鏡をかけた少し気の弱そうな先生であった。
「この人が合気道なんか出来るの?」
それが祥子ちゃんが浩輔を見た第一印象であった。
確かにどう見ても強そうには見えない。
もっと体育会系の人間かと想像していた祥子ちゃんにとって、少し拍子抜けがするとともに、やや安心ができた。
「この人が顧問だったら何も怖くないわ。」
そう思った。
しかし、実際に浩輔が道着を着て袴を穿いている姿は堂に入っていた。そして、実際に上手かった。
浩輔は主に二年三年生に技を指導し、祥子ちゃんは上級生から受け身の練習ばかり教えてもらった。
ほぼ一、二か月は受け身の練習ばかりであった。
最後に整理体操をして正座をして黙想、そして浩輔からの何かしらの注意や感想があり、礼をして終了する。
このパターンの繰り返しであった。
「早く技を教えて欲しいなあ。」
一年生の誰もが最初に思うことである。
それを察知してか、練習の終わりに浩輔が言った。
「一年生は受け身ばかりでしんどいなと思っているでしょうが、これが大切なんです。実は大学時代に一年生で受け身を一生懸命練習していた学生が車にはねられたんです。ところが、合気道の受け身をしっかりしていたために、一日検査入院しただけで怪我をまったくしていなかったということが本当にありました。以上。」
実は、これ以後の浩輔の話というのが、こんな話ばかりだったので、誰もが呆気にとられていた。
「開祖植芝盛平先生は、体重は40キロ、身長は150センチしかありませんでしたが、プロレスラーを簡単に投げ飛ばしました。」
「植芝先生はモンゴルへ行って、馬賊から機関銃を撃たれましたが、その中をくぐって行って、相手の手をひねり、投げ飛ばしました。」
「植芝先生が大本教の本部で修行していた時、光が降ってきて、それ以後、どんな敵がやってきても勝てるようになりました。この光はヨーガではマニとも呼ばれています。」
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