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電話を終えて店内に戻って来たレナは、ユウがまた違う女に豊満ボディーを擦り寄せられ、甘えた声で迫られている姿を見てため息をついた。
彼女は以前にグラビアの撮影で会ったことがある、最近若い男性に人気のアヤというグラドルだ。
あの頃と変わらないユウの優しさに触れてさっきまであたたかかった胸の奥が、黒く冷たい何かに覆われ、一瞬にして現実に引き戻される。
(そうだった……。ユウって……)
レナは席に戻ると黙って荷物と上着を手に取り、無表情で財布から千円札を二枚取り出してカウンターに置く。
「事務所から急用の電話だったから……私、もう行くね。どうぞごゆっくり」
ユウの目は見ずにそっけなくそう告げると、レナはユウに背を向けドアの方へと歩き出す。
「えっ?!レナ……!」
咄嗟に引き留めようとしたけれど、この状況を考えると“待って”とは言えなかった。
レナが気を悪くするのも無理はない。
走って追い掛けたい衝動をグッとこらえ、ユウはため息をついた。
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