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車はやがて赤信号で停止した。 そこで漸く、武士は自分らしからぬ行動をした気がして動揺した。 会社では、武士に若い恋人が出来たことがよほど興味深かったのか、尋問上手で察しのいい光輝に根掘り葉掘り聞かれそうになり、銀にずばり、“次に会う約束の取り付け方”に悩んでいたことを言い当てられ、芽衣の一言であっという間に会社を追い出されてきた。 『大学生くらいだと、社会人の彼氏が車でお迎えとか嬉しいはずよ』 にやりと笑みを向けられて居心地が悪くなり、仕舞に社長命令で「今日はもう上がって、会いに行ってこい」と追い出された。 なんなんだ、あの連係プレーは。 大虎の時も光輝の時も、あんなことはなかっただろう。 仲間たちを思い出すとため息が漏れそうだ。 全くもっておせっかい過ぎる。 そして、もう一つため息が漏れそうになった。 隣には雅が座っていて、ちらりと視線を向けると、頬を染めてそわそわしている。 勝手に大学まで来た挙句、攫って来たも同然なことをした。 「雅さん」 小さく呼びかけると、ピクリと肩を揺らし勢いよく自分を見上げた。 「すまなかったな」 「え?なにがですか?」 「……彼らと帰る約束をしていたのではないか?」 「あ、いえ!」 「これじゃあ彼らの言う通り、突然現れて攫った様なもんだろう」 信号は青に変わり、車を発進させる。 ちらりと雅を見れば、赤くなった頬を両手で覆って首を振っていた。 「みんなは唯のクラスメートですし。それに、私、武士さんが迎えに来てくれて、嬉しいです」 武士の頭の中で、クイズ番組の回答席に座った芽衣が正解のガッツポーズをした。 「私から連絡してもいいかどうか……迷ってたので」 しかし本当を言うと武士から連絡が欲しかったので、雅は今最高にときめいている。 そんな若い女子の気持ちなどわからないので、「そうか」と返事して会話が途切れてから、慌てて付け足した。 「いつでも連絡してくれて構わないですよ。平日の昼間は電話に出られないと思うので、メールにして頂けるとありがたいです。折を見て返信します」 「わかりました」 やや事務的な言い方だったが、雅は嬉しそうに頷いた。そして言った。 「夜なら電話しても、いいですか?あの、えっと、武士さんの声が聴きたい、ので」
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