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「気になりますよ!」 顔を真っ赤にさせて、上目遣いに潤んだ瞳を向ける。 この瞳にもやられたんだろうな、と思う。 頬を膨らませてすねた顔も可愛らしい。 その可愛らしさに思わず笑ってしまうと、雅が口まで尖らせた。 「笑って誤魔化したって駄目です」 「いや……あまりに可愛らしいので、仕事で疲れた時にでも眺めようかと」 「かっ、……可愛らしいっていうのは……私を子供だと思ってるんですか?」 ますます拗ねてしまった。 「まさか。子供と交際する趣味はありません」 武士の頭の中に、自分をロリコン呼ばわりした銀が浮かぶ。 「私だって……みんなは武士さんのこと、おじさんなんて失礼なこと言いましたけど……私はおじさんと付き合ってるつもり、ないですから」 雅は仲間達が発した文句を気にしていたようだ。 なんだ、そうか。 不意に、武士はすとんと腑に落ちた。 別に自分達がいいのだから、それでいいじゃないか。 なにをこんなに歳の差のことで悩んでいるんだ。 自分は彼女がよくて、彼女も自分がいいという。 それで、いいのか。 二階のカフェスペースの奥から盆を持った店員が近づいてくる。 コーヒーと紅茶をテーブルに置くと、小さくお辞儀をして去って行った。 「いただきますか」 コーヒーカップに手を伸ばすと、向かいで雅が小さく呟いた。 「私……ちゃんと武士さんの彼女ですか?」 とても小さい声だったが、しっかりと聞き取れた。 「えぇ、もちろん、そのつもりでしたが」 「そしたら、一つだけ、お願いしても、いいですか?」 「なんでしょう」 伺うように見上げる瞳は、ゆらりと揺れてから戻ってきた。 「もっと普通に、してもらえると、嬉しいです」 「……普通?」 「雅さん、じゃなくて、雅って。友達には呼び捨てにされるのに、武士さんには『雅さん』って呼ばれるの……やだ」 顔は頬を膨らませ口を尖らせた拗ねた表情のままだ。 「わかった」 返事をして、はにかんだ笑顔に目元が緩む。 感情のままに手を伸ばし、赤らんだ頬をそっと撫でた。 「可愛い」 嬉しそうに目を伏せる雅を見ながら、「可愛い」は良くて「可愛らしい」はダメだということをインプットした。 「雅」 がばっと音がしそうな勢いで顔を上げる。 武士は小さく笑いながらコーヒーカップを持ち上げた。
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