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それから二人は、デートを繰り返した。 水族館に遊園地も行ってみたが、二人が一番楽しめたのは、やはりBloodstonesのライブだった。 グッズに身を包み、爆音に重なる歓声に一緒に声を上げる。 武士は傍らの雅を見下ろし、口の端を持ち上げた。 一緒に楽しむ人が居るというのはいいものだ。 以前、大虎の嫁がファンだというので連れて来たことはあるのだが、連れて来た手前、一人で騒ぐわけにもいかずいつもの半分のテンションにとどまった。 それがどうだろう。 隣には自分と同じくらい、いや、それ以上にボルテージの上がった雅が居て、慎ましやかに座っていた見合いの席の彼女からは、到底考えられないほど別人と化している。 しかし、武士にはそれが良かった。 見た目の好みもさることながら、こうして同じ好きなものを同じ熱量で楽しむことができる。 時折、武士を見上げてくるのだが、それがまた、キラキラした瞳に満面の笑みで、武士の心臓をつかんで離さない。 やはりこの人なんだな、と武士は思った。 雅にゆっくりじっくり愛でたいなどと言ったのは、本当にそういう気持ちもあったにしろ、それだけではない。 抱いてしまえは離したくなくなるだろうし、これからもずっと一緒に居たい、と真剣に思えないとそうなりたくはない。 それに、万が一別れなんてことになったら、立ち直れない。 銀あたりに「据え膳食わぬはなんとかってやつだ」などと言われるだろうが、それでも武士は、やはりもう少し見極めたいと思っていた。 出会ってしまったと言った割に、踏ん切りがつかないとは情けない。 そもそも、どうして雅と出会ったのかと思い返した武士は決心をした。 ステージからはバラード曲が流れて来る。 それまで明るく眩しいほどに照らし出され、ステージを駆け回っていたBloodstonesのメンバーは、オレンジ色のライトの下、じっくりと曲を奏でる。 それは雅と見合いをしたときに、彼女が口ずさんだ『Destiny』でライブでは定番のバラード曲だが、今日だけは、どこか特別な曲に聞こえた。 隣の小さな手を包むように握る。 自分を見上げる視線を感じながら、ステージの上を見つめ、その曲の歌詞に思いを馳せ、手を広げて指を絡ませるように握り直した。
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