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多分、きっと、そのつもりで見合いをしていた。 そのはずだったと思うし、いつかは結婚したいと思っていた。 それなのに、武士の一言に雅は心底驚いた。 見合いというものが何なのか、きちんとわかっていなかったんだろう。 結婚するために、出会うのが“見合い”だ。 「結婚……」 「あぁ」 さっきは驚いて心臓が止まったかと思ったが、今度は煩く走り出す。 「結婚……」 「嫌か?」 「嫌とかじゃない、の。えっと、あの、」 瞳がゆらゆらと揺れ、一度躊躇ってから口を開く。 「お見合いをしたから……結婚、ですか?」 「……うん?」 「お、お見合いって、結婚するために、する、でしょ?だから、」 そこで言葉を切ると、武士が目を見開いて見つめていた。 「何を言っている?」 「な、なんか、ちょっと、びっくり、して」 瞳をゆらゆらと揺らす雅の頬を、武士は両手で覆って上げさせ、しっかりと目を見つめる。 「俺が雅を好きだと言ったことを忘れたのか?」 両手で覆った手の中で、小さく首が横に振られた。 「俺には雅しかいないと思っている。だから、結婚したいと思った」 「ん、」 「俺はいい歳だから、今すぐでもいいんだが」 「うん、」 「雅にはきちんと大学を卒業してほしいと思っている」 「えっ、」 「だから……雅が卒業したら……結婚しないか?」 武士の顔は優しく微笑んでいて、その顔を見たら涙腺が緩んだ。 「あ、あと3年も、ありますよ?武士さん、ちゃんと待っててくれますか?」 「当たり前だ。俺は雅しかいない」 「っ、」 「そもそも俺の方が婚約破棄されないか、不安だろう」 「それは、絶対ないです!」 「大学には男が沢山いるのにか?」 「え?男なんていましたっけ?」 「……うん?」 「私が男の人だと思うのは、武士さんとブラストだけです」 「……そこは俺だけにしないか?」 「今日ブラスト見たばかりなのに?」 「……」 「拗ねないでください。じゃあ、武士さんだけです」 「じゃあ、とは引っかかるな」 「ふふっ、」 「くくっ、」 顔を見合わせて、こつんと額が重なった。 「是非、よろしくお願いします」 呟くような小さな声だったが、しっかりと武士に伝わって、二人は視線を絡ませるとそっと唇を重ねた。
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