305人が本棚に入れています
本棚に追加
その頃、アリスにぶっ飛ばされた北の魔王は……
「ジーン……お前は本当に男だったのか? ああ、ジーンよ……」
魔王の間でしゃがみ込み、一人でブツブツと呟いていた。
すると、魔王の間の扉が開く。
「魔王様、お久しぶりです」
「ドードーではないか。どうした?」
「南の魔王様が、ジーン殿を連れ去ったと耳にしました」
「何だと!? クッ、弟め……だが、今の我にはどうする事もできぬ」
魔王は立ち上がる事ができず、暗い表情で俯いてしまった。
「何故ですか?」
「我は敗れたのだ。例えジーンを取り返したとしても、あの姫や執事が許すまい」
「そうでしょうか? アリストセバスたちは、そんな細かい事など気にしないでしょう。一緒に助け合えば、ジーン殿との婚約も認めてくれるはずです」
「……ジーンは男だぞ?」
「性転換の秘術を使えば良いのです。過去に魔王様自身がおっしゃられていましたよ。愛があれば、どんな障害も乗り越えていける……私には難しい言葉ですけどね」
「弟は強い。それに、配下の魔物のレベルも高すぎる」
「だからこそ、アリストセバスと協力するのです。この私も、必要であれば尽力致します」
「……まだ、我について来てくれるというのか?」
「みんな、魔王様の復活を願っていますよ」
北の魔王は立ち上がり、自ら封じていた凄まじい魔力を解放する。色を失っていた瞳には、力強い光が宿っていた。
「ドードー、召喚の鈴を二つ渡しておく。一つはチェシャに持たせておけ。いつでも戦えるよう、準備だけはしておくのだ」
「了解しました。行ってらっしゃいませ」
こうして、ジーンを救うべく北の魔王も動き始めた……
【完】
最初のコメントを投稿しよう!