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「じゃあ、俺たちはそろそろ帰るよ」
「アリスちゃん、またね」
「次は私が遊びに行くわ」
まるで、何事も無かったかのような会話がされている。
「セバス、ティータイムの続きよ」
「了解しました」
ジーンが再び攫われ、宮殿内がパニックに陥っても我関せずだ。
ハッタたちと別れ、アリスは自室へと向かう。すると、部屋の前で見覚えのある魔物が手を振っていた。
「チェシャじゃないの。魔物が宮殿内に忍び込むなんて大胆不敵ね」
「面白そうな事が起こってるから見に来たんだ」
「面白そうな事? 何かあったかしら?」
一瞬で忘れられたジーンが不憫すぎる。
「まあいいわ。チェシャも一緒にティータイムを楽しみましょう。美味しいクッキーもあるわよ」
「わーい!」
アリスたちは部屋に入り、のんびりとした空気が流れた。
「それで、面白い事って何なの?」
「あっ、忘れてた。南の魔王様が王子を攫って行かなかった?」
「……遠い昔、そんな事もあったわね」
忘れていた訳ではなく、既に過去の事らしい。
「昔じゃなくて、さっきの話でしょ」
「それで、どうしたの?」
「実は、南の魔王様は北の魔王様の弟なんだよ。北の魔王様が間違えて男を連れ去り、さらに取り返されたと聞いて爆笑したらしいんだ。絶世の美少女を間違える馬鹿はいない、俺が本物の姫を攫ってやるってね。でも、やっぱり攫われたのは……」
……
……
パリン……
アリスの持っていたティーカップが音を立てて壊れた。
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