305人が本棚に入れています
本棚に追加
「……セバス、南の魔王は私を見ていたかしら?」
「ハッキリと見ていましたね。それでも、高笑いしながらジーン様を連れて行きました」
「どういう事なの? 私より兄上の方が絶世の美少女と判断したの?」
「落ち着いて下さい」
「私はドレスで、兄上は王子の服を着ていたはずよね」
「落ち着いて下さい」
「お姫様抱っこされてた兄上は、顔を赤くしていたわ。変態なの?」
「落ち着いて下さい」
……
……
「ふっ、ふざけるなあ!!! 魔王の一族は馬鹿しかいないの!? 本当は男にしか興味が無いんじゃないの!? 私じゃなくて兄上を選ぶなんて許さない、絶対に許さない! 五回殺す! ヒールで踏みまくって、胸ぐら掴んで、壁までぶっ飛ばして、往復ビンタして、血反吐の中で土下座させてやるわ!」
その最強コンボは、既に北の魔王が身をもって体験済みだ。
気がつけば、チェシャは姿を消している。焚き付けておいて、後は面白おかしく観戦するつもりなのだろう。
「セバス、ハッタとヘイヤを連れて行くわ」
「そう言えば、別れ際にハッタ様が手紙を置いていかれました」
「手紙?」
『旅に出ます。探さないで下さい』
「……逃げたわね。まだ、遠くには行ってないはず。リリス、リリスはどこ!?」
「お呼びですか、アリス様」
「言わなくても分かるわね?」
「お任せ下さい」
もう一度、替玉になって堕落した生活がおくれるかも……そう考えていた召使いのリリスは、近くで息を潜めていたらしい。
「ハッタとヘイヤを仲間にして、南の魔王の城へ突撃よ。セバス、準備はいい?」
「三十年ほど待っていただけますか?」
「何か言った?」
「急ぎましょうと言いました」
またしても、どうでもいい理由で宮殿を飛び出してしまった。
まだ、アリスたちの冒険は終わらない。
最初のコメントを投稿しよう!