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「姫はどこだ? 隠しても無駄だぞ」
必死の抵抗も虚しく、兵士は次々と倒れていく。屈強な魔物の軍隊に為す術が無い。
そのまま姫を匿う部屋へと、魔王の侵入を許してしまった。
「見つけたぞ。大人しく妻となり、魔王の子を産むがよい」
姫は執事の背中に隠れ、兄のジーンが魔王の前へと飛び出す。
「ひっ、ひっ、姫は、わっ、渡さないぞ! ぼっ、僕が相手だ」
ガタガタと足を震わせ、両手を広げて妹を守ろうとする。魔王を目の前にした恐怖で、ジーンの瞳には涙が溢れていた。
「フハハハハ! 笑わせてくれる……可愛い顔をしたナイト様だな。か弱い女の様な兵士しか護衛に付けられぬのか?」
「うっ、煩い! いっ、妹は、ぼっ、僕が守るんだ」
「妹?」
魔王は動きを止め考察する。
いくら何でも宮殿の兵士たちが弱すぎた。それに、美少女と見間違うほど可愛い顔をした男が、泣きながら姫を護衛している。明らかに異常だ。
目的の姫に視線を移すと、鋭い目付きで睨み返してきた。
謀られていると感じた魔王は、一つの答えを導き出す。
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