連れ去る相手を間違えていませんか?

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「なるほど……替え玉という訳か。フフッ、簡単に騙されると思うな。お前、名は何と言う?」 「えっ? ジーンだけど……」 名乗った瞬間、魔王は凄まじい速さでジーンをお姫様抱っこした。 「わっ、わわわ! なっ、何をするんだ!?」 「我を欺けると思ったか。優しく潤った瞳、整った鼻筋、ぷっくりとした唇、金色の光を放つ美しい髪……白状したらどうだ、ジーン姫?」 「ひっ、姫? 何を勘違いしてるんだ。ぼっ、僕は……」 「これでもまだ、僕っ娘(ぼくっこ)を貫き通すと言うのか!? 気に入ったぞ。我が嫁に相応しい」 「だから、違うって! 僕は王子だ。執事の後ろに隠れているのが妹のアリスだよっ」 「アリス? あれが姫だと? 確かに美しい顔立ちをしているが、目付きが鋭すぎる。それに殺気も放っておるではないか。ドレスで姫に変装しているようだが、あちらが王子であろう。だが、念の為に確かめておくか」 魔王はジーンの肩まである髪をそっとかき分け、耳に優しく息を吹きかける。 「あっ……だめっ……耳は……うっ……」 ジーンは頬を赤らめ、体を震わせた。 「フッ、これで決まりだな。そんな可愛らしい反応で男と言っても、誰も信じぬ。さあ、婚姻の儀を挙げようぞ」 「ちょっ、だっ、誰か、助けてくれ!」 アリスが飛び出そうとして、執事のセバスに止められる。 そして、魔王は機嫌よく帰って行った。
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