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「っぃてっ!」
気持ち良ぉく眠りこけてた俺の頭を、誰かがいきなり容赦なく殴ってくれた。
誰か? そんなん、わかってる。俺の頭を容赦なく殴れるのは煌紀だけや。
「なにすんねん! 痛いんじゃ、アホッ。頭悪なったらどないしてくれんねん!」
「それ以上アホになるか、アホんだら。いい加減起きんか、あ?」
頭をさすりさすり後ろを振り向くと、目を据わらせた煌紀が俺をジトリと睨んでいた。
「ッうっ! 睨んでも怖ないでっ」
その圧倒的な威圧感に俺はタジタジとなりながら強がりを口にしてみるが、煌紀のやつ、
「フンッ」
って鼻で笑いやがった。
めちゃ馬鹿にされてる気分で、なんかけったくそ悪い。そりゃ学校着いた途端、机に突っ伏して寝てしまったんは悪いと思うし、起こしてくれた煌紀はなんも悪ないのやけど……
「もっと優しく起こしてくれたかていいやん」
恨みがましく言う俺を、冷気の漂う視線で見て、
「優しく起こしておまえ起きた試しあんのか? 時間の無駄や」
と、あっさり流されてしまった。
当たってるだけに、ちょっと辛い。シュンとした俺の頭を煌紀はクシャクシャと撫ぜ、
「あぁ痛かったなあ、痛いの痛いの飛んでけぇ」
って、まるで小さい子どもにするようにおまじないを口にした。実は煌紀のコレ、好きなんや。昔っからいっこも変わらへんくて、俺はそれだけでなんか嬉しくなる。
俺、等々力央二。
口は、まあ少々悪いけどそこそこバかやっても乗ってくれる友達もいる。……多分。
なんか微妙やねんなぁ。こんなに漢気溢れてんのに、言うことかいて、『かわいい』って言われてるみたいなんや。かわいい?絶対有り得へん。
確かに見てくれは、目のでっかいオカン似の女顔かもしれへんけど、ちょっと背もこじんまりしてるけど、髪もちょい中途半端な長さのウルフカット気味で茶髪やから、女の子に間違えられることもたまにないとは言えんけど……
ウゥーッ。
なんか哀しいかも。煌紀なんか無駄に背は高いし。目付き悪いけど顔だってカッコいいし。男の俺でも惚れ惚れする。いいよなぁ、ちょっと羨ましい…… 煌紀、男にも女にもめちゃモテんねん。
……俺、煌紀に実は片思いやから、構ってもらえて嬉しい反面、たまにようわからん…… なんで俺とツルんでんやろ? みたいな?
同居人ちゃ同居人やけどさ…… あぁ……わからん!
もう一回寝よかな、また煌紀に怒られそうやけど起きてたら暗くなる…… てなわけで、もう一回おやすみ……
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