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俺は、七竹煌紀。
多分、今も近寄るなオーラ発してるんちゃうか? 俺の前で、何の悩みもありませんみたいなアホ面晒して寝入ってる央二のファンクラブの奴等が央二の寝顔を携帯に納めようとウロウロしてるけど、俺の近よんなオーラに負けて涙を飲んでいる。うん、こういう場合、今までの経験が生きてるっぽくていいカンジや。
「煌紀、鬼の面になってるわ」
俺の横から失礼なこと言うのは、俺や央二の中学の時からのツレ、篤郎。クククッとイヤな笑い方してからに、なんやムカつく。
「意外に短気なやつやな、おまえも。綺麗すぎてめちゃ冷たい顔になってるわ。その顔でどんだけの女、フってきてん? あぁ男もか? 罪作りなやつやなぁ、王子様も」
基本テキトーな篤郎はいつもの如くふざけた呼び方で央二を顎でさした。俺と同じくらい背の高い篤郎と三人で並べば正に央二はちっちゃいお子ちゃまで、いかにも王子様なんてふざけた呼び方がぴったりだ。本人には口が裂けても言えないけど。
すやすやと気持ち良さそうに眠る央二を尻目に、なんでこいつが好きかなと考える。
「なぁ、王子様は今でもバイトしてんのか?」
篤郎は央二の髪をつつきながら、俺に目を向ける。
「してるみたいやな。一応人気みたいやけど、何回尻拭いさせられたことか……」
俺は深く深く溜め息ついた。央二はお金がいいからなんて理由だけで、夜、ボーイズバーでバーテンのバイトをしてる。それはこいつのオカンが生きてる時から続いてるけど、オヤジのシマなんやから大人しくしてたらいいのにしょっちゅう喧嘩しては納めに、なんか知らんけど俺が出張ることになる。『ええ加減にせぇ』と言いたくなるけど、今のところ改善される見込みはない。
「おまえも大変やな」
人ごとのように言う篤郎に微妙に殺意を感じる。
「仕方ないわ、惚れた弱みや」
篤郎の言い種にしみじみその通りや思う。俺も眠りの世界に逃避するかな……
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