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どこかで空気が凍りつく音がした。
彼女が、ゆっくりと顔をこちらに向けた。
褐色のつややかな肌に、卵方の輪郭に収まったクールな美貌が、とんでもなく崩壊しかけている。
眉間には三本の深い縦ジワが刻まれ、形の良いぷっくりとした唇はいびつに歪み、顔の真ん中でちょっと大きめの鼻が不機嫌そうに胡坐をかいてしまっている。
セクシーでワイルドな美女の顔が、地球観光のお土産にもらった黒い悪魔のお面みたいになっているよう!
そして彼女は大きく深呼吸すると、天を仰いだ。
「テェ~スゥゥゥ~~。おまえさんは、何を……」
地を這うようなクリスタの低音ボイス。
頭のいい彼女は、これから降りかかるであろう「親友のめんどうごと」と、恒例の「その後始末の煩わしさ」をいち早く察知したんだろう。頭ふたつ分くらい上から、射殺されるんじゃないかって思うほどの鋭い視線を飛ばしてきた。
「ごっ…ごめんなさいっ! 先に、あやまるから……怒らないでッ!!」
電撃を受けることを覚悟して、身体を小さくして目を瞑る。
――ピンポ~ン!
そこへ絶妙のタイミングで、ドアのチャイムが鳴った。
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