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誰だろう。なんにしても、その人物は救いの神に違いないわ。クリスタの刺すような視線から逃げ出して、そそくさと玄関へ急ぐ。
来訪者の確認チェックボタンを押すと、センサーチェック『OK』の合図が出る。もちろんあたしとクリスタが入室許可登録していない人物には、『OUT』の表示が出るの。
そしたらドアは絶対に開かない。
この建物の防犯対策はかなり厳重。
通りに面した最初のドアの暗唱番号を押して建物の中に入ると、高い天井の共用玄関があるの。
奥の突き当りに、さらに堅固なドアが見えてくるわ。このドアは建物内部に通じていて、そう簡単には開かない。承認システムが設置してあるから。
ドアを開けるには、あたしたち住人は管理人から渡された特別な錠と虹彩や耳介などの生体認証スキャンのチェックを受け、外部からの訪問者はインターホンで訪問先の住人の許可を得なければならないのよ。
さらに各階の共用の廊下から、間借りしている部屋への入り口(玄関)にもうひとつ。これは住人同士のプライバシーを守るためのもの。
もちろん住人の承認および生体承認システムの許可無しには、こちらのドアも開きません。
こうしていくつかのロック解除や承認審査をパスして、ようやくあたしたちの住居スペースに辿りつけるということなの。
外部からの不法侵入者を防ぐためには、このくらいしないとダメなんだって。故郷の田舎とは大違い。都会って、物騒なのね。
特にクリスタは、知名度が上がってマスコミ関係のかなり強引な取材なんかも増えちゃったから、セキュリティの必要性はいやがうえにも増してきちゃったのよー。
もうひとつトリッキーな防犯装置を取り付けようかってクリスタは言うんだけど、あんまり奇抜なもの仕掛けられたら、怪しい侵入者より先にあたしが『OUT』になりそうだわ!
で、チャイムのコール音が1回ということは、訪問者は同じ建物内の住人。ご近所さんがあたしたちの住居スペースの玄関前で待機中。「ドアを開けて」のサインを出しているってこと。
クリスタの機嫌を損ねているあたしとしては、お客様大歓迎の状態なのよ。『OK』表示が出ると、モニターの確認もそこそこにドアの開閉スイッチをONにしてしまう。
女の子のふたり暮らしなんだから、用心のため、来訪者をキチンと確認してからドアを開けろってクリスタから言われてるんだけど、あわてんぼうのあたしはいつもフライング気味。
セキュリティの意味、無いわね。
そして開いたドアの向こうには、このアパートメントの上層階に住む、友人のメリル・ペタンクールが立っていた。
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