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「ふぇ~~ん、クリスタぁ~」
となりの親友は、黙々と口に運んでいた朝食の手を休めて、ようやくあたしと目を合わせた。
彼女はクリスタ・ロードウェイ。
あたしの幼馴染で親友で、この部屋を一緒にシェアして、同じ大学に通っている。
それとも、モデルの『クリスタ』って言った方が、わかりやすいかしら。
191センチの長身の、黒人系の遺伝子が強く表れた容姿を持つクール・ビューティー。
このシーズン、人気急上昇中の新進デザイナー、ロマン・ナダルのポスターに起用されて、彼女の人気も急上昇中。マスコミ露出率も、軒並みアップしている。
それでも変わらず、あたしの親友。
「どう、話す気になったかい? 昨日からこの世の終わりみたいな顔してるぞ。どうせまたリックとケンカでもしたんだろ。
はいはい、今度のケンカの理由はなんだって?」
彼女はまるで今日のスケジュールを確認するような口調で、あたしを諌める。
リックって云うのが、あたしのカレ……ううん、もうすぐ元カレになるオトコの名前。
「違うの、あたし決めたのよ。一大決心したんだから!」
「ふんふん。謝るんなら、あいつの機嫌のいい時にしなさいよ」
「そうね……って、違ーーうッ! 謝るんじゃないの、別れるのッ!」
クリスタの深緑色の瞳が、大きく見開かれる。
暫しの間。
TVでは、キャスターが次の話題の紹介に移る。
「別れるって、誰と?」
「だから、リックと!」
クリスタは左手でこめかみを押さえた。ついでに右手に持っていたフォークを置いた。
「テスが、リックと……かい?」
「ほ……他に、誰がいるの……」
彼女はマグカップに手を伸ばすと、コーヒーを飲みほした。
「――いや。確か、つい2日前に『あたしはリックと結婚したい』と言っていた女が、目の前にいるような気がするんだが……」
あたしは口を歪める。
間違いじゃありません。それは確かに、あたしです。
「ハイスクールのころからのくされ……いや、ラブラブの仲じゃないか。プロムでキング&クイーンに選ばれたときだって大喜びしてた。そーいやぁ、そのころから結婚するのしないの騒いでいたよーな……」
目を閉じ、うんうんと頷きながら、そんなこと思い出さないでよ~~。
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