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第一話 おきにいり
おきにいり 八木蒔 粽
「あれ以来、わたし、家族の元でしか働けなくなったわ。」
高校の同級生だった佐々木は眉をひそめて言った。
K県内に住むオーエルの佐々木は、大学卒業後、親元を離れ、T県の
サービスエリアで売り子として働いていた。そこは、
少し前まではさびれていたものの、去年の大型リニューアルをへて、
週末はファミリー層のお客で賑わうレジャースポットとなった。
今ではその地域の主要なサービスエリアだ。
しかし、そんな賑やかな雰囲気とはおよそ似つかわしくない「連絡通路」と呼ばれる場所があった。向かいの車線側の建物へと通じる、自販機一台のみがぽつんとあるひどく静かな場所で、異様な視線を感じる所だった。
「なんか不気味だな、とは思ったけど、わざわざ反対側の車線まで行くお客なんかいないと思ってはじめは気にしてなかったんだけどね。」
佐々木は、新人の仕事として通路の自販機の売上金の回収にあたっていた。
自販機の操作なんて業者がやるものなのではないだろうか、そもそも、商品が疎らな自動販売機なんておかしい、と不審に思ったが、先輩に逆らうことはできなかった。
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