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もちろん目などない。だが、そのジトっとした深い暗闇の奥から、
ゾクッとする様なまなざしを感じた。
逃げねば!まずいまずいまずい!
体は動いてくれない。
助けを呼ばなければ!
声は出ない。
そうこうしている内にそいつは顔を覗き込んできた。生臭いにおいが鼻をつく。
「おげ○ぁぢゃ○○ぼぐぁ○え○ぃ」
ものすごい力で右腕を掴まれた。
そこで意識は途絶えた。
どのくらい意識がなかったのだろうか。
佐々木は事務所で目が覚めた。外は闇で包まれていた。
頭が痛い。さっきのことは夢だったのだろうか。そう思いたい自分が
いた。しかし、受け入れざる負えなかった。右腕には濃い痣が残り、
先ほどの恐ろしい体験が紛れもない事実であることを証明するには
十分だった。
そんな時、
「今回も逢魔が時だったな。」
「今回は気に入られちゃったみたいで早く処分しないとこちらも大変なことになりますよ。」
そんな、エリア長と先輩の話声がした。
何かおかしい。
静かに聞き耳をたてる。
「前回の様に面倒くさいことになっては潰しがきかんぞ。」
「そうですね、できるだけ穏便に。」
何のことだろうか。先ほどとは異なったとてつもない不安感がおそう。
「早くここから離れよう。ここにいちゃだめだ。」
そっと事務所から出る。ひとがたくさんいる所へ出たい。
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