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射落とされた瞬間のことは記憶にない。
あっという間の出来事で、何が起きたか理解できなかったのだ。
ぼんやりと覚えているのは、こちらを覗き込んでいる顔だ。
たぶん女の子だったと思う。
目をいっぱいに開き、口をぽかんと開いていた。
彼女はおそるおそる俺に触ろうとしてきた。
普段ならば逃げるか、でなければ指を噛みちぎってやっているところだが、右の翼と胸骨を折っていたのではそれは無理な話だった。
矢はまだ翼の根本に刺さったままで、血が伝って地面にしたたり落ちている。
どこのどいつだか知らないが、いい腕してやがる。
相手は風切り羽根をつっついても無反応だとわかると、もっと大胆に触り始めた。
おかげで俺は犬のように頭をなでられるという屈辱に甘んじるはめになった。
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