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彼女は肩にかけていたショールを取ると、それで俺を大ざっぱに包み込み、抱き上げた。
しばらく体がぐらぐら揺れるのを感じてから、階段を上がる足音がし、それからどこかのドアが開けられた。
空気の感じが変わり、芳香剤と木の家具の匂いが混ざった。
女の声がしたが、すぐにそれは金切り声に変わった。
「鴉なんか拾って来ないでよ! 捨ててきなさい!」
女の子はしゃっくりを上げ、俺を抱いたまま外に飛び出した。
そいつの言う通りにしろよ。
俺はそう言おうとした。別にお前を恨みはしない。
ここでくたばるのが運命なんだ。
そう言おうとしたが喉の奥に熱い塊が詰まり、声にならない。
胃が痙攣し、逆流した胃液がショールを汚した。
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