2.九灯明日人《くとうあすひと》

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 ガラス戸のロックは下がったままだ。 上階に住んでいる住人は窓の鍵をかける習慣がないのだろう。 くちばしで押して開き、ベランダに出た。  カラーを取るのにはかなり苦戦したが、暴れに暴れてようやく首を引っこ抜くことに成功した。 包帯を引きちぎって当て木をはずし、手すりまで飛び上がる。 完治したとは言えないが、飛べないほどではない。 違和感も次第に消えるだろう。  十五階建てマンションの最上階だった。 空には雲一つなく、いい天気だ。 三月の始めごろだが、空気の中には若葉の匂いが溶けている。 春も近い。
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