2.九灯明日人《くとうあすひと》

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 大空に羽ばたき、風の中に身を踊らせた。 気流のうねりの中をほとんど羽ばたかずに泳いでいるときは、いつもこの種に生まれついたことを感謝する。  文字通り羽根を伸ばしがてら、しばらく界隈を見て回った。 果てしなく続く荒涼とした郊外の片隅にある、そこそこ小ぎれいな集合住宅地だった。 複数の集合住宅が集まって集落を作り、小さな商店街もある。  マンションの峡谷にある児童公園に行き、ジャングルジムのてっぺんに止まると、先日のことを思い出した。 確かここで羽を休めている時に射落とされたのだ。 飛び立とうとした瞬間を狙われた。 ベランダを一つずつ眺めたが、さすがにどこから射られたのかまではわからない。
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