2.九灯明日人《くとうあすひと》

5/7
前へ
/109ページ
次へ
 砂場のほうで遊んでいた子供たちがこっちに気づき、石ころを投げつけてきた。 飛び立って上空を旋回し、その中に俺を助けてくれた女の子を探したが、見つからなかった。  あの子と、治療してくれた誰か、俺を射た野郎。 この三者にはそれぞれ貸し借りが出来た。 一つずつ返して行こう。 特に三人目には念入りに。  立ち並ぶ建物を眺めながら飛び回っていると、俺が目覚めた棟の三階あたりの廊下でもめ事が起きていた。  背の高い男と太った男がもみ合いになっている。 その間に髪を乱したセーラー服の少女がいた。 太った男はだらしない格好で涎を垂らし、獣みたいな吠え声をあげて女の子に掴みかかっていた。 背の高い男が何とかそれを引きはがそうとしている。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加