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緊張が解けたその様子を見て、翔はやっと柔らかく笑った。
「ごめんな」
「どうして謝ってるの?」
尋ねると、愛の足首に包帯をまき終えた翔は、見上げる角度で愛の目を覗き込んだ。
そのまっすぐな目線に、胸が高鳴る。
「ずっと黙ってた。金井先生が怪しいということ」
ああ。
それは、
「まさか担任がテロリストなんて、私が学園生活を『普通に』楽しむためには、できるだけ言いたくないって思ったんでしょ」
翔はそういうやつだ。
「お前がいなくなった時、もうダメだと思ったよ」
そう言う瞳が切ない。
そう言う瞳をさせてしまっている自分が苦しい。
「ごめん。もうこれ以上、私のために、誰も傷ついて欲しくないと思ったの」
答える。
翔は「分かってる」と頷いた。
「・・・・翔」
呟くように言う。
翔は「どうした」と優しく返した。
「私、暗証番号、思い出した」
翔が目を丸くする。
愛はうつむきながら、
「よく言われてたの。『あなたが生まれた日は大切だから、覚えておいてね』って」
「誕生日か? いや、それはあまりにも単純じゃーーー」
「違うよ」
顔を上げる。
翔と目を合わせる。
まっすぐで、強くて、暖かい瞳だ。
「翔、私の名前は『愛』なの。大切なのは、『愛』が生まれた日なの」
翔がハッとしたような表情になる。
愛は小さく頷いた。
「お母さんがお父さんに一目惚れしたのは、二人が警察学校の入学式を終えた次の日だよ」
公安の記録を調べればすぐに分かる。
翔は小さく頷いて、スマホを取り出した。
打っているメッセージの相手は、おそらく皆川だろう。
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