55人が本棚に入れています
本棚に追加
父と母は、間違いなく、愛に託していたのだ。
自分たちが命をかけた、その証を。
「・・・私、結局こうやって守られてしまうね」
メッセージを打ち終わった翔に向かい、ほとんど独り言のように訴える。
翔はスマホから顔を上げ、再び愛を見つめた。
どうして私はこんなに、
あなたに守られてしまうのだろうか。
翔はしばらく沈黙した。
何を考えているのか、よく分からない、そのまっすぐな瞳。
やがて翔は、
すっと息を吸って、
その息を吐き出すのと同じくらい自然な調子で言った。
「俺は、お前のことが好きで、お前のことが大切で、お前を失いたくない。それだけじゃ、俺がお前に命をかける理由としては不十分か?」
瞳に色がつく。
困ったような、そんな色。
まるで、どうすればいいんだと、途方に暮れたような、そんな色。
そんな風に、私のことを見つめてくれるのは、
あなたしかいない。
守られてしまうばかりだけど、
私は何もできないけど、
それでもあなたがーーーあなたが、それが良いと言ってくれるのであれば。
愛は息を吸って、
吐くのと同時に、ふっと笑った。
それから、まっすぐに翔を見つめ、
静かに、言った。
「好きな人に大切にされて、それで、それだけじゃ足りないなんてそんなわがまま、私が言うって本気で思う?」
その言葉を聞いて翔は、
やっと安心したように、柔らかく笑ってくれたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!