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「大丈夫?」
優しい響きだった。
うっすら目を開ける。声を裏切らない、優しい顔がそこにあった。
優しい、だけで片付けるのは少し雑かもしれない。
目鼻が整っていて、瞳には少し外国人風の雰囲気がある。爽やかさの中に甘さがあり、夏のメロンアイスを想像させる。
髪の毛はふさふさの栗色。見るからに柔らかそうだ。
「終点だよ」
その言葉にやっと、愛は、自分が電車の座席に横になって眠りこけていたことに気づいた。
「あ……ごめんなさい」
答えて体を起こす。彼は少し心配そうに、「体調悪い?」と尋ねてきた。
「いや。大丈夫です。わざわざありがとう」
答えてにこりと笑うと、彼はふっと笑みを浮かべた。「そっか。よかった」
なんて罪作りな。
その笑顔に内心やられつつ、荷物棚にあげていた荷物を取るために手を伸ばした。彼はそんな愛に気づいたようで、素早く愛のボストンバックを取ってくれた。
この身長差、ざっと175センチくらいだろうか。
悪くない。
「ありがとう」
精一杯の笑顔を浮かべてバックを受け取る。
愛は起こしてくれた少年と、電車を下りた。他の乗客はもうとっくに姿を消している。
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