第4章 復讐の時

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「お母さんねーお父さんに、一目惚れしたの」 美里はそう言って、膝の上に抱いていた愛を抱きしめた。 「お父さん、すっごくかっこよかったんだから。で、お父さんに話しかけたくて、頑張ったの」 「どう頑張ったの?」 あどけない笑顔で、ワクワクと話を聞く、まだ幼い自分。 「お勉強、頑張ったのよ」 意外な答えに、「え?」と首をかしげる。 美里は笑って、 「入学式の次の日に、教室で見て、一目惚れしちゃって。お父さんになんとか存在に気づいてもらおうと思って、お勉強頑張ったの」 わけが分からなかった。 当時の愛には、「好き」とは幼稚園の周りの子たちの様子を介してしか知らなくて。 だからこそ、「好き」と「お勉強」がどう繋がるのか、全く理解できなかった。 「そのうち、愛にもお話しするわね」 美里はそう、優しげな笑みで笑う。 その「お話し」を聞くことは、結局できなかった。
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