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その学園は、国道から一本筋を入った、少し静かなエリアに存在した。
怒りに任せて筋を曲がり、突如現れた大きな門に、まず愛は驚愕して固まった。
ここが仁徳学園……。
関東では有名な全寮制私立。
進学校として東京大学など最難関大学に多くの進学者をだす他、人間性の教育に力を入れた数々のカリキュラムが世界からも注目されている、関東圏の全中学生の憧れの学校だ。
有名企業で働くOBOGによるサマーインターンプログラム。
世界の提携校との交換留学。
先生が運営に関わらない、生徒だけで設計する特色ある学校行事。
有名建築家のデザインしたスタイリッシュなキャンパス。
その全てが、愛のこれからの新しい人生のスタートを祝福するものだ。
ここで、私はやり直す。
私の人生を、やり直すのだ。
先ほどまで内臓の中を支配していた怒りを飲み込み、愛は大きく深呼吸をした。
切り替えよう。今日は、始まりの朝なのだから。
やや緊張しつつ、インターホンを押した。ピンポーン、というおきまりの音が響いて、「はい」と女性の声があった。
「あ、本日からお世話になる、美浜愛です」
「ああ。美浜さんね。お待ちしていました。ちょっと待ってね」
ややあって、厳かな門が低い唸りをあげながら開いた。中からひょっこり顔を出したのは、黒髪をポニーテールに結った、いかにも賢そうな若い女性だった。
「美浜さん?」
にこりと笑って近づいてくる。
「はい。美浜です」
「初めまして。私は校長補佐の岡部真子と言います。よろしくね」
真子はそう言って手を差し出してきた。愛は慌てて握手を交わし、「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「まず校長室に案内するわ。入って」
真子はそう言い、先に立って門をくぐった。愛は慌てて、その後に続いた。
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