金狼、銀月

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「毛頭無いのはかまわない。そんなものは、こっちも、否、誰も期待していない。しかし人並みには愛しろ、それなら出来るはずだ、踏ん張れ、ジョッシュ、自分の怨霊に飲み込まれるな!」 「うわああ!!」 おお、見よ、諸君、これは、ジョッシュの体に、変化が、 剛毛が体内から湧き上がってくる。 目が釣りあがり、口の左右が裂ける。 獣人化現象だ。しかし、これは、肉体がひね曲がり、醜い!狼ではなく、醜い鬼、悪魔の姿ではないか。 「月に、月光に集中しろ、意識をはずすな、おまえの守護神から手を離すんじゃない」 「月に・・月・・」 かっ! ジョッシュは、その赤く火のついたような目を月に向けた。 「だめなら、素直に助けを求めよ!ジョッシュ、おまえは、人に絶望したな。あのとき、雪原の中に一人取り残されたときに」 「うう、うああ」 「だから、もう二度と泣き言を言うまいと心に決めた。しかし、良いじゃないか。自分の限界があったというのならば、それを素直に認めて、他人に助力を望んでも、誰かに救いを求めても、ジョッシュ、おまえ、そのプライドはすばらしいかもしれないが、人との連携を阻んでいるんだ。それを判れ、素直に、きついときには”助けてくれ”と言うんだ、どうだ、ジョッシュ」 「い、いやだ、オレは、オレは人間なんかじゃない、くだらなく醜い人間なんかじゃない」 「どんな美しい女性でも、トイレには行くんだ、それが人間だ。青鹿先生だって、獣人化を起こしたお前を始めてみたとき、驚いて失禁したじゃないか。狼だって、縄張りを示すためにマーキングするじゃないか。それが、生きるということなんだ、わかれよ、ジョッシュ!醜く生きるか、高貴に生きるかを決められるのが、人間なんだ」 がおおおおん! しかし、今のジョッシュには、どうして四郎が青鹿先生のことを知っているのか?と疑問に思う意識はわずかだった。 悪鬼のような姿に変身したジョッシュが立ち上がり、四郎に襲い掛かる。 しゅ! 前足ともウデともつかぬものが、四郎の姿を神速で裂く。 ちがう・・それは四郎の残像だった。 しゃいいい! 手ごたえのなさを、ジョッシュだったものも、感じたのだろう、その一撃で満足することなく、続く。 ぎゅうん、じゅん! 獣人の左右の手が、空気を切り裂いて、その鋭いカギつめで四郎を殺そうとする。
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