金狼、銀月

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 満月の光を、体一杯に浴びる。上半身は裸。しかし、初夏のこの時期、寒くは無い。元々、寒さには強い体質だ。痩せているが、ひ弱な感じはしない。鞭のような美しく鍛えられた肉体だ。岩の上に胡坐をかいて座る。目は半眼。眠るでもなく、何かに焦点を合わすでも無い。 すううう・・ふううう・・・ 白銀の光をゆっくりと呼吸する。時間をかけて吸い込み、 く・・・腹の中で一回とどめ肛門を締め、圧縮、その後、 はああ・・・ゆっくりとそれを吐き出す。 それを淡々と繰り返すのみ。 腹の中、想像上で息を圧縮したヘソの少しした辺りから、体中に光が、走る。 ただのイメージだけの話、遊びのようなものだと高をくくっていたが、なかなかにそれだけではなかったことを感じざるを得ない、ジョッシュ・パーミタであった。 全身のエネルギーレベルが急速に上がっていくのがわかる。今までの、月光による高揚感などとは桁違いだった。 月光が、まるで溶岩とかであるような質感と熱量を持っているのだ。それが、血管を使って全身に行き渡る。 うむ・・たといこれが、怪しげな催眠術とかであろうと、結果オーライというものであろう。 東洋の瞑想技法、侮るべからず。誇りあるアメリカ先住民、インディアン”ウルフ・アイ”一族の戦士を自認する彼は、今までの自分のそれが我流に過ぎなかったことを認めざるを得ない。  彼はまだ、若い。青年と少年の間の顔をしている。この一族の先祖には、名作映画”ソルジャー オブ サン”の主人公戦士ベガのモデルになった勇者”天の川”が居て、その映画を見て、彼も一族の誇りに目覚めたのだった。  先日の、セイタンズ・エンジェルズの襲撃もそうだった。  一族の古老が大惨事を予知予想し、それに従って、アリゾナの片田舎のチェンバースからジョッシュは遠くNYまで旅したのだった。期待したスラム街ハーレムの英雄、ソニー・リンクスには出会えなかったが、そこで偶然出会った超能力者集団を引き連れて、少年は帰ってきた。  男女含めて7人組、見てくれからしてほとんど荒事には向かない連中だったのだが、しかし、その超能力者としての能力は確かに瞠目すべきものがあった。そして実際にチェンバースに襲い掛かってきた無法者の集団をものの見事に撃退したのだった。
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