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”どうぞ”といったが、瞑想を解く様子はまったくなかった。なかなかに月光を浴びて、どこかの寺院に安置されている仏像のようだ。
「良い月だな」
このシロー、言葉を聞くだけでも、気に触る。しかし、出自を聞けば納得が出来ないわけでもない。この男の実力を知らなければ荒唐無稽というしかないが、この男、大宇宙をまたにかける”悪霊集団”幻魔の一匹ザンビと合体したというのだ。幻魔と合体して、しかし、人間としての理性を失わず、それだけでなく、その幻魔の超能力を自分のものにしたのだという。
「お月見だったら、よそでやってもらえませんか」
「僕が居ると、気になるかい」
「ええ・・要件を済ませて、さっさといってくれませんか」
瞑想、月の”力”を十全に受けるためにやっているわけで、どこかの怪しげな宗教家が言うように、人格を磨くためにやっているわけではない。江田四郎の齎す微かな邪気さえ、ジョッシュには目障りなのだ。せっかくの”月の光”が翳ってしまう。
「キンケイド署長は一命を取り留めたそうだ、今、ミチコさんから連絡があった」
「そうですか、それは、よかった」
「たいしたものだな、キミ達の”血”は」
「そうですかね。ミチコが”光”を入れてくれたからだって評判だけど」
「その”光”にしっかりと応えてくれたからこそ、あの瀕死の署長がよみがえったんだ」
攻撃してくるセイタンズ・エンジェルズには当然だが、守備側のチェンバースにも多数の死傷者が出た。
「それを言えば、あの暴走族野郎どもの”血”の効果も、バカにならなかったとか・・」
「ああ、あいつら全員、からだの中に小型の機械を埋め込んでいるし、あやしげな”薬”を使っているし、ただの暴走族じゃないのは間違いないな。サイボーグというとおこがましいが、強化人間ってことは言えるかもしれない。とにかく金が掛かっているのは間違いない」
「暴走族風情でできることではないってことかい」
「うむ・・けんかに強くなるだけなら、薬だけで十分だ。もっとも、そこらの売人が扱っている類の麻薬じゃないようだ。今、クエーサのラボで成分を調査するように手配しているが」
「いずれ、セイタンズの連中の体の中の機械についても調べるんだろ?あいつらの生き残りとかを乗せたのは、警察の車じゃなかった」
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