金狼、銀月

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「まったくわからないが、青鹿先生がキミから出会ってからの半年ほどで、よほど厳しい経験をしたのだろう。だから、記憶を失ってしまった」 「僕は・・僕は、みんなに災厄を齎す人間だから」 「なんだか、聞いたよ、その話。なんか、みんなにそれを言いふらして、世捨て人のような生活をしているそうじゃないか、キンケイド署長が心配していた。その昔、有名な占星術師だかに、そういわれたんだって?」 「ああ、そうだよ、そうだ、オレは、災厄を呼ぶ人間なんだ。先日のセイタンズ・エンジェルスがこの町に襲い掛かってきたのも、そのせいに違いないんだ」 「それを聞いたときに、人がなんていうか知っているか、ジョッシュ君」 「いや・・」 「じゃあ、教えて進ぜよう。こういうんだ、”たわけか、おみゃあは!”」 「た、たわけ?なんです、すりゃあ」さすがにクールで通そうとしているジョッシュも、目を開ききょとんとした顔で、四郎を見返した。 「知らないか、まあ、名古屋出身の高鳥ってバカモノの口癖だがな」その顔を見て、江田四郎がしてやったりという薄笑いをしている。 「ナゴヤ・・ですか・・うむ、それで?」なんとなく、それが名古屋の方言の罵倒だということはわかったようだ。 「おまえみたいなガキンちょに、そんな影響力があると思うか?」 「でも・・」 「そうだ、おまえが、周囲に悪念を発散していない限りな」 「・・・オレが、悪念を撒き散らしている・・?」 「ぴんぽ~ん」 「オレ・・が」 「今までも言ってきただろう、ジョッシュ、おまえがただ肉体的超人だというだけじゃなく、隠れエスパーだってことを」 「それは、聞いたけど」 「だから、判れよ、その事実を。そして、それを制御するんだ」 「オレが悪念を撒き散らしている」ジョッシュは、もう一度、呆然としていった。 「そうだ、周囲の人たちを害する悪念をな」 「そんな、オレはそんなつもりは無い」 「おまえの表面意識はそうかも知れんが、それと現実は違う」 「表面意識は・・・」 「そうだ、そして、おまえの心の底では、悪念が渦巻いて、周囲の人々に悪念を撒き散らしているのさ。おまえさん自身が知らなくても、おまえさんの背中で、周囲のヤクザモノに喧嘩を売って歩いているようなものさ」 「そんな・・オレは別に、そんなことを考えても思っても居ない」
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