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『蓮華、如意宝珠を探し求めなさい。華の世は徒花の如く、緩やかに終末へと向かい、枯れつつあるのです。如意とは思った事がその通りになる、という意味。その名が示すように如意宝珠とは人の願いを思いのままに叶える宝珠。それを不動の国におわす龍神様から授かり、扱うには神性という資格が必要です。そして、如意宝珠を使い、華の世を永遠のものとすることが出来る可能性を持つ者は蓮華、貴女しかいない。それこそが貴女が下界で成すべき役目、使命なのです』
蓮華はお告げを聞いたその晩の内に旅の支度を整え──次の日、決然と翁と媼に切り出します。昨夜に見た夢の内容を。自分が成すべき使命を。
「お爺様、お婆様。手前勝手にこの地を立つことをお許し下さい。ですが、かねてより私はどうして、このような【力】を授かったのか、その理由を探しておりました。昨晩の太陽神様の神託により、ようやく、それがはっきりしたのです」
今は戦乱の世。二人は最初こそ「行かないでおくれ」そう懇願しておりましたが、決意のこもった眼差しに次第に何も言う事ができなくなります。
「蓮華や、どうやら決心は固いようじゃの。行ってくるがいい。わしらは、もう止めはせん。だが、神の子であろうと。主はわしらの子じゃ、一寸の頃からその成長を見守ってきた。その覆らない現と共に、主の郷里はここにある。……いつでも戻っておいで、蓮華」
翁の意見に媼も頷きます。
「ありがとう……お爺様、お婆様」
翁と媼の温かな計らいに背を押され、蓮華は蓮の国を立つことになりました。
旅立った蓮華は身に宿す異能で旅先の様々な困却している人々を救っていきます。
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