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『授ける事は容易である。だがこれを扱うには、資格が必要だ。【神性】という資格が。しかし、視たところ汝の神性は永い永い旅を経る内にとうに絶え果て、枯渇してしまったとみえる。……神通も、無償ではない』
「そんな……では、どうすれば……?」
彼女はその事実に愕然とします。
すると、蓮華の心情を見てとった龍神様は、
『……そう悲観することはない。華の世の枯死は極めて緩やかに進行している。汝の行ってきた善行に答え、我が力をもって汝の神通を代々汝の族に受け継がれるようにしよう。蓮の国へ戻り、子を成すがよい。汝の次の、そのまた次の代か──我の与り知る事柄ではないが、だが確言しよう。いずれ、汝の神性を遥かに凌駕し、華の世を救い得る童が生まれ落ちる。継承した神通により、善き業を積む事を族の役目とせよ。それが族に課す我からの代価である。神性を備えたその子が我の元へたどり着けたならば、我はその子に無限の価値を持つ珠。如意宝珠を授けよう。しかし、ゆめ忘れるな。願いには代償が付き物。それだけの願いを叶えるというならば、珠はその子の魂を要求するであろう。その条件を飲んだ時こそ永遠の繁栄が約束される』
と、お答えになりました。
龍神様のお言葉を聞き届けた蓮華は自身の族にそのような宿命を負わせてしまってよいものか……心に澱を抱えながらも蓮の国へと戻ります。そこで図らすも、以前より心を寄せていた相手と結ばれ、子宝にも恵まれて、蓮華はようやく自身の使命から解き放たれたのです。
ただの村民として、幸せな余生を送ることができたのでした。
──されど、世の陰りは、未だ晴れず──
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