348人が本棚に入れています
本棚に追加
「綺麗事なんて、俺だってそう思いますよ」
俺の言葉に、弾かれたように顔をあげる。
「まあ、捉え方次第だと思いますけど。俺の場合、寄ってくるやつを無我夢中で貪る、一種の作業みたいな感じでした。そんなの、気持ちいいもクソもなかったです」
「じゃあ、なんで…」
「俺、一時期狂ってたんですよね。もう誰でもいいや~って。見た目が違うだけで人間、っていうくくりでは同じですし。体だって勝手に動いてました。誘われるがままに、みたいな」
そこで、鬱陶しい髪をかきあげる。
「ああ、なんで、でしたよね。簡単ですよ。甘える相手がいなかったからです」
部屋に、沈黙が訪れる。
「だったら、好きなやつとやればよかったのに」
最初のコメントを投稿しよう!