社会人生活の送り方~羽島努の場合~

2/2
前へ
/31ページ
次へ
俺の仕事はいわゆる教師である。 正確には、家庭教師、塾講師と呼ばれるものである。 昔は学校の教師になりたいと思っていた時期もあったが、 昨今の学校教師を取り巻く環境は厳しい。 いじめ問題、部活顧問による休日の搾取。 大学時代のアルバイトで、 成績を上げられないと嘆く生徒を教えることにやりがいを見出だしていた俺は塾業界の大手を転々とした後、今の会社に引っこ抜かれた。正確には、今の職場の社長が、独立する際、一緒に来ないかと誘ってくれたのだ。 今の職場環境には満足していた。 生徒は完全担当制がしかれており、保護者から成績向上が芳しくない、相性が合わないなどの不満がない限り、最後までその生徒を見届けられる。 最近は不登校の生徒の登録も多く、早い時間帯を有効活用できることも大きい。 フリーランスに近いこの仕事では、勤務時間を自分で決められる分、働かなければ収入はない。 そういうと、子供を食い物にしているようで嫌だが。 しかし、この仕事をしていると、不登校の生徒が増えていることに驚かされる。しかし、不登校の生徒たちは、慣れてくれさえすれば、普通の生徒となにも変わらなかった。 保護者ともうまく話せないこともあり、 他の生徒以上に打ち解けてくれることも多い。そういう生徒は、成績が上がった時の喜びもひとしおだ。 と、心の中はなかなか熱いとよく言われるが、 表情と連動してないので、本気なのかよく分からないと 先程話していた友人には言われたことがある。 ただ、その分おとなしい子供には安心感があるのかもな。 その友人は女遊びは激しいが、なかなか良いやつである。 でなければ、人付き合いの悪い俺が高校から長く付き合ってくることはできなかっただろう。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加