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-好きな人にクリスマスの予定を聞いたら、好きな人ができたと言われた―
冬の公園はやはり肌寒い。外気は凍てつくような風を纏って、私のコートを静かに揺らした。空はどんよりと雲に覆われている。
今でも見返してしまう。スマホの画面に綴られた彼の言葉を。その度に胸が痛くなって、寂しくなって、嘘であって欲しいと本気で望んでしまう。それでも、その言葉は確かにそこに綴られていて、彼の心は私のもとにはない。ただ、私の言葉だけが一人歩きしている。
吐き出したため息は白かった。
ぐるぐると回る思考、思惑。どこで間違えたのだろう、なにを間違えたのだろう。何度となく考えたって、何度なく泣いたって、私には一つしか答えを見つけられなかった。
私が間違えたこと。それはきっと、すべてだ。全部が間違えだった。勘違いしていた。ずっと一番近くに居たから、そう思い込んでいたから、だから見えていなかった。彼がどこを見ているのか、どっちを向いているのか、なにも気がつけなかった。
いや、ただ勇気がなくて。私は彼に縋って、逃げていただけなのかもしれない。ありえないって無責任に、勝手に届きもしない気持ちを押し付けてたのかもしれない。
ふいに、頬へ冷たいものが落ちる。
「……雪」
見上げれば、はらはらと綿のような雪。冷たいはずのそれらが、でも今はなんだか温かい。暖かく私を包む。私が流し続けた涙にたしかに届く。訴えかける。
涙の末に見つけた、私の気持ちに。
私はもう、逃げない。
やっと気づいた。気持ちや、私や、彼の事に。それでようやく前を向けた。もう、遅いのかもしれない、いや遅い、手遅れだ。それでも、確かに私の心はあって今も奥の方で燃えている。だから、逃げられない。
「わりい、遅くなって」
雪の中に優しい声が響く。その声をもっと聞きたかった。
「ううん、ごめん呼び出して」
そのはにかんだ笑顔に触れたかった。
今も隣に居てくれるそんな君に、届けばいい。私の心が届けばいい。無責任だってわかってる。それでも、私はまだ諦めたくない。
……だから。
「私じゃ、ダメかな」
雪のように響け。
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