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一体誰がアイル号を襲撃したのだろう。
息を弾ませシャインは駆けた。
上甲板のヘルム副長や水兵達は襲撃者と戦っているだろう。
彼らは大丈夫だろうか。
シャインは梯子を上り、メインマスト前の開口部から上甲板に出た。
日没を迎えた海上は夜の闇に覆われていて、驚くほどの静寂に満ちていた。
甲板の上は砲撃を受けて立ち込める白い硝煙と、裂けてしまった帆、切れた上げ綱がぶらぶらと幽霊船さながら揺れている。
そして濃い血の匂いがした。
そのせいだろう。息を吸うと眩暈がするのは。
アイル号の水兵四十名と思しき躯が、甲板のあちらこちらに倒れ伏している。
小さなうめき声が聞こえるので、まだ何人かは息があるようだ。
どうして、こんなことに。
一体、誰が。
それらを凝視し、シャインは唇を噛んだ。
いけない。しっかりしなければ。
無意識の内に小脇に抱えた船鐘を握る手に力を込めた。
襲撃者達がまだ甲板にいるはずだ。
彼らの目的はどうやらこの船鐘なのだから。
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