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もっとも、船の精霊の姿が見える者など滅多にいない。
(見たという者もいる)この慣習は無意味だといわれているが、海軍が設立された頃からある古いものなので、航海の安全と船に対する礼儀の心を失わないためにも現在まで続けられている。
実際誓いの指輪を帯びたシャインは、その場の空気がひやりと変化したような気分にとらわれた。頬を撫でる風までも、何らかの意思を持った存在のように感じてしまう。
考えすぎだな。落ち着かないと。
呼吸を整え、シャインは祝酒のリボンに結ばれたもう一方の指輪を外した。これは式が終了後、シャインが船のとある場所に密かにしまうことになっている。
指輪を軍服のポケットへ滑り込ませてから、シャインは祭壇を回りこみ、その先に突き出ている舳先(バウスプリット)へと足を進めた。
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