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「ぐっ!」
シャインは増した痛みに目を細めた。
シャインを見下ろす男の長靴が、撃たれた左肩の傷口をぐっと踏みつけている。
「お前が持っていてもしょうがないんだ」
痛みで視界がかすむ。
顔を見てやりたいのに宵闇のせいで暗く見えない。
話す言葉はくだけたエルシーア語のようだが。
「これは……渡さ、ない」
衝動的にシャインは口走った。
脳裏に黄昏色の髪をした少女の顔が過ったからだ。
船鐘を抱える左腕に力を込める。
「ああそうかい!」
傷口を踏みつける力が再び強くなった。
急に左手に力が入らなくなった。
「素直に渡せば、鎖骨を折らなくても済んだのに」
男はシャインの顔を覗き込みながら、あざ笑うようにつぶやいた。
シャインの左手は船鐘から呆気なく滑り落ちた。
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