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日没前、船首で佇んでいたのを見た姿は、うっすらとした光を身に纏い、淡く儚げな印象だったが、自分の顔を覗き込む彼女は、生きている人間と同じように見える。
「私が傷口を縛るわ。それを渡して」
「あ、ああ……」
シャインが襟飾りを少女の方へ渡した時、彼女の手がそっと指に触れた。
『ありがとう。船鐘を守ってくれて』
脳裏に彼女の柔らかい声が響いた。
まぎれもなく、シャインに呼びかけてきた声と同じ少女の声だ。
それに気付くと少女がこくりとうなずいた。
「そう。私があなたに話しかけたの」
「君は――『船の精霊(レイディ)』なのか?」
「船のレイディ……?」
少女は一瞬戸惑ったように目を細めた。
何かを思い出したのか、シャインから視線を逸らし俯く。
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