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「あ、いや、ごめん。変なことを言ってすまない。日没前に船首で見かけた君が、まるで精霊みたいに見えたから……それに」
シャインは右手を伸ばして船鐘を自分の方へ引き寄せた。
「言い伝えだと、船の魂である『船の精霊(レイディ)』は、船鐘に宿るそうだから、勝手に俺が、そう思い込んだ」
「いいえ。その通りよ。私は『船の精霊(レイディ)』
揺るぎない強い瞳で少女はシャインを見つめた。
「私のことは『レイディ』と呼んで」
「……本当に?」
「ええ、そうよ」
「わかった」
彼女――レイディの澄み切った青い瞳からシャインは目を逸らすことができなかった。
その瞳を覗き込むとまるで自分の心と彼女の心が繋がったように感じられたからだ。
その感覚に戸惑いつつシャインは口を開いた。
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