1-2 精霊の少女

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「おかしい」 「どうしたの?」 「いや。この船鐘を狙っている奴らがいるはずなんだが、まだ甲板に上がってこない」 「――心配する必要はないわ。彼らはもう死んでいるもの」 「なんだって?」  シャインの隣に膝を抱え座ったレイディが、小さくため息をついてつぶやいた。 「あなたを撃ったあの男が殺したの。シャインが艦長室から出た直後に、入れ替わりであの男がやってきて彼らを殺した」  レイディの瞳の中には、悲しみと僅かな怒りが込められていた。 「レイディ、君は彼らが何者か知っているのか?」  赤い髪がさざ波のようにゆっくりと揺れた。 「ごめんなさい。私もよくわからないわ。でも安心して。もう彼らは立ち去ったから」  立ち去った?  シャインはメインマストにすがりながら、ゆっくりと立ち上がった。  右手でその太い柱につかまり、夜の闇で黒々とした海面を見つめた。  少し前までは、アイル号を砲撃した武装船が炎上していたが、今はその影すら見えない。
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