331人が本棚に入れています
本棚に追加
「おかしい」
「どうしたの?」
「いや。この船鐘を狙っている奴らがいるはずなんだが、まだ甲板に上がってこない」
「――心配する必要はないわ。彼らはもう死んでいるもの」
「なんだって?」
シャインの隣に膝を抱え座ったレイディが、小さくため息をついてつぶやいた。
「あなたを撃ったあの男が殺したの。シャインが艦長室から出た直後に、入れ替わりであの男がやってきて彼らを殺した」
レイディの瞳の中には、悲しみと僅かな怒りが込められていた。
「レイディ、君は彼らが何者か知っているのか?」
赤い髪がさざ波のようにゆっくりと揺れた。
「ごめんなさい。私もよくわからないわ。でも安心して。もう彼らは立ち去ったから」
立ち去った?
シャインはメインマストにすがりながら、ゆっくりと立ち上がった。
右手でその太い柱につかまり、夜の闇で黒々とした海面を見つめた。
少し前までは、アイル号を砲撃した武装船が炎上していたが、今はその影すら見えない。
最初のコメントを投稿しよう!