331人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの船は三十分前に沈んだわ。火薬庫に火がついて、そこに開いた穴から海水が一気に入り込んだから。もう一隻のスクーナー船はとっくの昔にここを立ち去った」
「……」
シャインはよろめきながらメインマストから離れた。
武装船が沈んだことで思い出したのだ。
「レイディ、君は大丈夫か?」
「えっ」
「アイル号は砲撃を受けたんだ。メインマストの帆桁(ヤード)が吹っ飛んでるし、船体にも穴が開いているはずだ」
そう思う根拠はある。
アイル号が右舷側に少し傾いている。波のうねりのせいではない。
「大丈夫よ。この船はまだ沈まないわ。いえ――沈ませない」
儚げな印象の彼女が、力強くそう、答えた。
ふわりと白い花びらのようなドレスを揺らし、シャインの隣へ歩いてくる。
「シャイン。これからどうするの?」
最初のコメントを投稿しよう!