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どうすると聞かれても――。
シャインは荒い呼吸をしながら、足を動かした。
重い海風に乗って、ヘルム副長のうめき声が後部甲板の方から聞こえたような気がしたのだ。
後部甲板に行くたった五段の階段を上るのが永遠のように思われた。
手すりに身を預け顔を上げると、舵輪の手前で仰向けに倒れているヘルム副長の姿が見えた。
「生きているわ。でも……」
レイディが口籠ったそのわけはすぐにわかった。
メインマストの帆を張るための長い帆桁が、砲撃を受けて索が切れ、彼の両足の上に落ちていたからだ。
「ヘルム副長、しっかりして下さい」
シャインは彼の傍らに膝を付き呼びかけた。
「その声は――グラヴェール、か」
ヘルムの顔は血の気がなく蒼白だったが、顔を覗き込むシャインのことはわかったらしい。
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