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「シャイン、待って」
シャインの隣にレイディがふわりと飛んできた。
「私が船を動かすわ」
「えっ?」
彼女を信じないわけではない。
彼女はまぎれもなくアイル号の船の精霊だろう。
「大丈夫。あなたが行きたいと思う場所に私が船を動かすわ。手を出して、シャイン」
シャインは舵輪から手を離し、黙って右手をレイディに伸ばした。
華奢な指がシャインの掌を包み込む。
「アスラトルまでの帰り方を頭の中でイメージするだけでいいの。後は私がやるから」
「……わかった」
シャインは目を閉じた。
母港アスラトルを出港したのは僅か三日前だ。
しかもずっと南西風を受けて北東寄りで来たので、帰りはその逆に進めばいい。
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