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背の高い壮年の男性。くすんだ薄い緑色のズボンと綿のシャツ。
まくった袖から見える二の腕はがっしりとしていて、職人気質がうかがえるがんこそうな瞳と髪は茶色なのに、ふさふさの眉毛は白くなっている。
その姿を見た途端、シャインは驚きのあまり椅子から立ち上がっていた。
「ホープさん……ホープさんじゃないですか!」
壮年の男――ホープは片手を挙げてにやりと笑んだ。
「体の具合はどうじゃ? シャイン」
シャインに声をかけてきた男は、エルシーア海軍の軍艦を造る造船主任のホープだった。
船が好きなシャインは幼い頃より、エルドロイン河岸にある王立海軍造船所に暇さえあれば入り浸っていた。
グラヴェール家が代々海軍士官を生業としているので、造船所には面識のある技術者も多い。ホープもその一人だった。
危険な場所に近づかないこと。
作業の邪魔をしないこと。
この条件を守ることでホープは子供だったシャインに造船所の立ち入りを特別に許してくれた。
海軍士官学校に入学するため、十四才で家を出るまで、シャインの造船所遊び(ホープにはそう思われていた)は続いた。
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