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「シャイン、ちょっとこいつの端っこを持ってくれ」
「はい」
ホープは筒から新聞紙を丸めたぐらいの大きさの紙を抜き出して広げた。
シャインは広げられた紙面を見るため右手で端を持って覗き込んだ。
しっとりとした紙質のそれは船の設計図だった。そこに描かれていたのは、一見貴族が船遊びに使用するような、全長五十リール(1リール=1メートル)に満たない、優雅な三本マストを戴く縦帆船(スクーナー)――。
「何ですか? この船は」
正直シャインは面喰らっていた。
わざわざホープが持ってきた設計図なのだから、それは海軍の新型の大型船に違いないと思っていたからだ。けれど設計図に描かれていたのは軍船ではなく、商船といっていいほどの小さな船。これならきっと、動かすだけなら十人でこと足りる。
でも――。
シャインは知らず知らずのうちに、設計図に描かれた船体の鋭利な流線形を人差し指でなぞっていた。
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